住宅診断のチェックポイント(床下側の基礎)

住宅診断(ホームインスペクション)を専門家に依頼せず、自分だけでできる範囲のことをしたいという人向けに参考となるチェックポイントを解説しています。前回の「住宅診断のチェックポイント(建物外部の基礎)」では、建物の外側から基礎を診断するポイントについて紹介しました。

今回は同じ基礎でも外側からではなく、床下側から見たときのポイントを紹介します。

1.床下側の基礎も大事

建物のことを考えるときに基礎が非常に大事な部位であることは、もう充分に理解されていることと思います。住宅診断で基礎を診るときは、建物の外側(屋外)から見るだけではなく、床下側からも見ておくことが強く推奨されます。

1-1.基礎の症状は床下にのみ現れることも多い

基礎に現れる様々な症状は、建物外部には生じていなくても床下側には生じていたという事例は数多くあるからです。外部だけを見て安心するわけにもいかないのです。

1-2.点検口の位置を確認しよう

床下側を見る方法は、床下点検口から覗いて確認する方法が最も推奨されます。点検口は、多くの住宅において床下収納庫が兼ねていますが、専用の点検口が付いていることもあります。まずは、その点検口の位置探しから始めることになります。

床下点検口

点検口の位置は、売主よりヒアリングするとよいのですが、中古住宅においては売主が点検口の位置を把握していないこともあります。

たとえば、和室の畳の下に点検口があることを住んでいた売主も知らなかったということや、収納内の床に点検口があることを完全に忘れていたという具合です。よって、売主に聞いて「知らない」と回答されたとしてもあきらめずに探してみるとよいでしょう。

ただ、残念ながら床下点検口が設置されていない住宅もありますから、その場合は設置してからでないと確認できません。

1-3.換気口から床下を確認できるか?

床下点検口がないときに、基礎の換気口から覗いて確認してほしいと言われたことがあります。点検口がないのであれば、止むを得ず点検口からライトをあてて覗いてみるのですが、非常に見づらくあまり診断の役には立ちません。

点検口が無い住宅であれば、住宅診断をする上で不利な条件であることを理解しておきましょう。

1-4.床下に潜るべきか?

床下点検口がある場合、床下内部まで潜っていって見るべきでしょうか?

こう聞かれたならば、基本的には「イエス」と答えます。ただ、それは専門家が潜って調査するならば潜ってみた方がよいのですが、自分自身で調査するときはやめておいた方がよいでしょう。

その理由は、危険だからです。

慣れない人が床下に潜ると、怪我をしたり何らかの部位を傷めたりするリスクがあります。また、購入前は他人の所有物ですから誤って壊してしまうと問題ですね。専門家に住宅診断(ホームインスペクション)を依頼するときは、追加料金を支払ってでも床下を診断してもらうべきだと考えますが、自分で見るときは無理しないようにしましょう。

2.床下側から見える基礎の住宅診断のチェックポイント

それでは、床下側から見える基礎のチェックポイントを挙げていきます。以下は実際に専門家が住宅診断をするときに確認するポイントです。

  • ひび割れ(クラック)
  • 基礎コンクリートの劣化・不具合
  • カビ・変色・染み
  • ジャンカ
  • 鉄筋の露出
  • 白華現象
  • 基礎パッキン
  • 換気口の状態
  • 蟻道

以上を見てみると気づく人もいると思いますが、前回の「住宅診断のチェックポイント(建物外部の基礎)」で挙げたポイントとほぼ同じ内容になっています。

同じ基礎の診断ですから、見る方向が外部から床下側へと変わっただけなのでチェックポイントは大きくは変わらないのです。そこで、ここでは建物外部と異なる点についてのみ説明します。

2-1.ひび割れ(クラック)・基礎コンクリートの劣化・不具合

住宅診断のチェックポイント(建物外部の基礎)」でも説明した通り、建物外部側の基礎の表面にはモルタルが施工されていることがほとんどです。なかにはコンクリート打ちっ放しの住宅もありますが、多くはモルタル仕上げになっています。

しかし、外部ではモルタル仕上げにしている住宅でも基礎の床下側にはモルタルを施工していません。

つまり、床下側からならば、基礎コンクリートを直接に確認することができるのです。これは床下の調査をする大きなメリットですね。

建物外部でひび割れ(クラック)が見つかっても、モルタルだけの者である可能性がありますが、床下側で見つかったひび割れは基礎構造部分そのもののひび割れであるので、こちらの方が問題視されます。

基礎のひび割れ

外部で基礎のひび割れが多いときや、やや大きなサイズのひび割れが見つかったときなどには、ぜひ床下側も確認しておきたいものです。

ひび割れだけではなく、欠損があってもそうです。多少のことであれば直ちに影響はないと言えますが、欠損している面積が大きい場合は少し心配しなければなりません。

2-2.カビ・変色・染み

カビや変色、染みが無いかを確認すること自体は外部と同じです。確認した際に該当する症状が見つかった場合、雨漏りや設備配管からの漏水、さらには結露の可能性まで考えてチェックする必要があります。

たとえば、外壁内部に雨水が浸水して床下側の基礎表面まで流れていたケースや、床下の酷い結露で基礎表面が湿っていたケースなどが確認されています。以下の写真では土台から基礎にかけて染みが見られますね。

基礎のシミ

2-3.ジャンカ・鉄筋の露出

建物外部では見られなかったのに、床下側にはジャンカや鉄筋の露出といった症状が確認される事例もあります。

基礎の一部を人為的に破壊して鉄筋が切断されている事例が見つかることもありますが、その破壊箇所が荷重のかかる重要な箇所であれば、心配が大きくなります。

なぜ、人為的に基礎を破壊するものかと不思議に思う人もいるかもしれませんが、リフォームで床下配管などをやり替えるときに人が通るルートを作るために、いい加減な施工業者が基礎を破壊する事例は数多く確認されています。

以下の写真では基礎を破壊して鉄筋が切断されていることもわかります。

基礎の破壊

2-4.換気口・基礎パッキン

換気口の周囲にひび割れが生じやすいのは床下側も同じです。むしろ床下の方がよく見つかることでしょう。

基礎パッキン工法である場合は、基礎の天端付近を見れば外部からの光が差し込んでいるかどうかで通気スペースが確保されているかどうか確認できることも多いです。床下は暗いため外部の光が入ればわかりやすのです。

2-5.蟻道

床下側でも蟻道の有無を確認しますが、実際に蟻道があれば基礎以外の部分(土台や大引きなど)にも被害がないか確認すべきです。外部よりも床下の方が蟻道を確認できるケースが多いことも知っておきましょう。

ここまで読んで頂いて床下側から基礎をチェックする重要性も理解して頂けたと思います。点検口から確認することを忘れないようにしてください。