欠陥住宅のトラブル発生後に買主が対処すべき方法と注意点

欠陥住宅のトラブル発生後に買主が対処すべき方法と注意点

新築住宅を購入したものの、買ってから建物の不具合や欠陥に悩まされている人はいつまでも無くなりません。購入した住宅において欠陥が見つかったときに、所有者(買主または施主)がとるべき対処方法や注意点を多くの欠陥住宅の調査をしてきた経験から解説します。

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1.新築住宅でも欠陥工事は多い

新築住宅を購入した人からアネストへ、「不具合があるので調査してほしい」「入居後すぐに欠陥が見つかったので原因を調べてほしい」といったご相談が毎日のように入ってきます。アネストへの相談だけでも毎日のようにあるぐらいですから、全国でどれだけの人が欠陥住宅問題で悩んでいるのかと考えると不思議に思えてきます。

ちなみに、普段は購入前や購入直後の人向けに住宅診断(ホームインスペクション)をしているのですが、このような不具合・欠陥に関する調査も内容によっては対応しており、いろいろなノウハウの蓄積があります。

新築するときには、建築確認や瑕疵保険などの検査制度があるにも関わらず、これらが適切に機能していないこともあって、欠陥トラブルは無くならないのです。欠陥が減っていないという話については、「不動産業者が言う「新築住宅の住宅診断は不要」は本当か?」も参考になります。

住宅を購入する人であれば、誰でも欠陥トラブルに巻き込まれる可能性があるということを理解しておきたいものです。

2.欠陥住宅の事例

具体的にはどのような欠陥トラブルがあるのでしょうか。この記事では、床や壁の仕上げ材に現れたちょっとした不具合ではなく、もっと大きな問題について事例を挙げておきます。但し、壁などのちょっとした不具合(ひび割れ等)も他の症状との総合的な判断から、思っていたよりも重症ということもありますから、油断はできません。

2-1.雨漏り

新築住宅なのに雨漏りなどあるはずがないと考えている人もいます。しかし、現実にはそうでもありません。

建物は、基本的には外壁や屋根などの外部に接する部分の仕上げ材とその内側にある防水シート等によって、雨水が建物内部(室内)へ侵入することを防いでいます。これらのいずれにも問題があれば、室内への雨水の侵入を許してしまいます。

サッシ周りやバルコニーなど、雨漏りの原因となりやすい箇所がいくつかありますが、そういった箇所の施工ミスがあれば新築すぐの建物でも雨漏りはするのです。

雨漏り

2-2.床下の漏水

欠陥住宅の相談のなかでも、床下の漏水に関するものは多いです。

床下で漏水といえば、配管からの漏水が最も多いのですが、基礎コンクリートの隙間から雨水が浸水していることもあります。コンクリートに隙間があるかどうか見た目ではわかりませんし、一般の人はそういった漏水があるとは考えもしませんので、原因に気づかないことも多いです。

基礎の底版部分と立上り部分の打ち継ぎ部分から、雨水が浸水するという事例です。長期間、浸水していたとなれば、鉄筋の錆などの心配も出てくるものですから早期に対処したいものです。

2-3.結露(小屋裏の換気不足)

結露の問題も多いです。室内で確認される結露だけではなく、小屋裏の結露は問題が大きいことがよくあります。

天井に染みがあるのを見つけたとき、雨漏りを疑う人が多いです。確かに雨漏りの可能性もあるのですが、調査してみると小屋裏の結露であったという事例は多いです。小屋裏の換気が不十分であったために生じたものなのですが、設計上の問題だと言えるでしょう。

2-4.断熱材の施工不良

調査をしていて最も多い指摘事例は断熱材の施工不良です。床下でも小屋裏でもよく発見される問題です。

床下や小屋裏は、居住してから確認する人はほとんどおりませんので、断熱材の施工不良に気づかずに暮らしている人はかなり多いです。結露などの2次被害をきっかけに気づくこともあれば、別件の調査(雨漏りなど)の際に偶然に発見されることもあります。もちろん、新築で購入した時に床下や小屋裏まで調査すればそのときに発見されます。

断熱材の施工不良とは、隙間だらけで断熱性が劣っていることもあれば、そもそも部分的に断熱材がないということもあります。断熱材がなければ、夏は暑く冬は寒くなり、快適性が下がってしまいますから暮らしていく上で大事なことなのです。

欠陥トラブルの事例は他にもいろいろなものがありますが、今回のコラムではそれは本題ではありませんから、この辺にしておいて次からは、欠陥工事を見つけたあとにとるべき対応などについて解説します。

3.欠陥発見後に買主がやるべきこと

何らかの欠陥、施工不良に気づいたときに、適切な対応をしなければ、問題をより大きくしてしまい被害が拡大することがあります。売主や建築会社のなかには、誤魔化そうとする人たちも少なくないですから、慎重に対応したいものです。

アネストに調査依頼する人の多くは、売主や建築会社の対応に不信感を覚えてから依頼しているようですが、その時点では問題が悪化している人もいますので、以降の対処方法は理解しておきたいものです。

基本的には以下の順にそって対処するものです。但し、状況に応じた臨機応変な対応が必要となることもありますから、これに固執する必要はありません。

  1. 現状の保存と写真撮影
  2. 売主・建築会社への連絡
  3. 保証範囲・内容の確認(10年保証とその他の保証)
  4. 原因と被害範囲を確認
  5. 瑕疵保険会社への連絡(状況次第)
  6. 第三者の住宅検査を活用(状況次第)

それでは、以上の対処の1つ1つについて、以下でもう少し詳しく説明していきます。

3-1・現状の保存と写真撮影

壁や天井に現れた水染み、ひび割れ、床の傾きなど、様々な症状を発見したとき、最初にやるべきことは、記録を残すということです。

写真撮影して、後からでもその症状を確認できるようにしておきます。例えば、天井からポタポタと水が落ちてきたというとき、すぐにその水をふき取りたくなりますが、後からどの程度の水量が落ちてきたか確認できるように、また正確な場所がどこであったかわかるように写真撮影しておきましょう。

ひび割れにしても同様です。ただ、写真で記録できない事象もあります。たとえば、臭いの問題です。洗面台付近から臭気が漂っているということは撮影できませんね。

写真撮影できることでもできないことでも、発見日時や天候、場所はメモしておくようにしましょう。同様の症状が繰り返し起こるということもありますが、都度、同じように記録してください。

3-2.売主・建築会社への連絡

何らかの不具合・症状を発見すれば、その住宅の売主や建築会社へ連絡をとり、現場を見に来てもらうことになります。このときに売主等が、その症状を確認できなければ対応が遅れがちになりますから、現状を保存したままの状態で見に来てもらうことが大事なポイントです。

ただ、大量の漏水など緊急時であり、且つ売主等がすぐに現場へ来られないときには、別業者などで応急措置をとるべきときもあります。そういったときであっても、必ず写真などで記録を残しておくことを忘れないでください。

また、売主等へは「すぐに見に来られないのであれば、応急措置をとっておく」との旨を連絡し了解を得ておくおことをお勧めします。なぜならば、売主等に対しては本来なら補修等の対応をする前に見せるべきものだからです。これを怠ると、補修工事等の方法が悪かったなどと言い逃れの理由にされる可能性が高まります。

3-3.保証範囲・内容の確認(10年保証とその他の保証)

売主や建築会社へ連絡した後、もしくは現場を見て帰った後には、その住宅に関する保証関係をよく確認しておいてください。売主等が見に来る前に確認する時間があれば、先に見ておいた方がよいこともあります。

売買契約の際にもらっている保証書、アフターサービス規準書などで確認できるはずです。売買契約書や重要事項説明書のなかにも、関連することが記載されていることは多いです。保証書などは売買契約書と一緒に保管しておく必要がありますね。

売主等が、保証対象外であるなどと説明しても、それが本当かどうか確認する作業は意外と大事です。アフターサービス規準に明記されていることでも、誤った説明を受けることがあるからです。

3-4.原因と被害範囲を確認

漏水などの不具合事象が見つかれば、その原因と被害範囲を確認することは大事なことです。たとえば、2階の寝室の壁から雨漏りしたとき、漏水箇所に近い位置で外壁のひび割れを発見したとします。これが原因であるかどうか確認せずに、そのひび割れを補修したとしても、原因箇所でなければまた雨漏りすることでしょう。

そうやって本当の原因の特定が遅れることで雨漏り被害が深刻なものへなっていく可能性もあるのです。そのひび割れからの漏水であるかどうか、たとえば散水試験をして確認するなどの対応を検討しなければなりません。

また、壁内部の見えない箇所へ多くの雨水が侵入しているとカビや腐食といったリスクもあります。水量が少なくなさそうであれば、内部状況の確認もした方がよいでしょう。

原因や被害範囲の調査は、売主や建築会社に要請して対応してもらうものですから、対応を求めていくようにしましょう。

3-5.瑕疵保険会社への連絡(状況次第)

一部を除いて、多くの新築住宅は瑕疵保険に加入しています。その瑕疵保険の対象となる可能性がある問題であれば、瑕疵保険会社へ連絡する必要があります。但し、加入しているのは売主や建築会社ですから、その会社から連絡してもらうよう要請しましょう。

内容によっては、瑕疵保険会社から検査員が派遣されたり、別の検査会社の検査を入れるよう指示が入ったりします。

3-6.第三者の住宅検査を活用(状況次第)

買主から見て、売主や建築会社の対応に不信感があるときや売主等で原因調査ができないときなどには、第三者の住宅検査会社に依頼するという方法もあります。

売主等による保証の対象となることであれば、その検査費用については売主等で負担するように交渉する人が多いということも参考にしてください。

以上が、住宅に欠陥などが発見されたときに買主がとるべき対処方法です。何か建物に不具合を感じているのであれば、参考にしてください。

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