アパートのホームインスペクション(住宅診断)の必要性と注意点

アパートのホームインスペクション(住宅診断)の必要性と注意点

個人が行う不動産投資の1つはアパートの購入や建築です。都市型アパートもあれば郊外型のアパートで高利回りを優先する投資など投資手法は人それぞれですが、どのような人にとっても共通で重要なことは、建物の施工品質の確保や劣化状態の把握です。

新築時の施工品質に問題があり後から発覚すれば、補修工事に際しての入居者との調整(工事日や立会い等のこと)に苦労しますし、建設会社との交渉も大変です。中古アパートでも建物の劣化等に起因して入居者とトラブルになることがあります。

ホームインスペクション(住宅診断)をしておくことで、これらすべての問題を回避できるとは限りませんが、リスクをある程度のレベルまで抑制することができるので、堅実なアパート経営を実現するために重要なものだと言えるでしょう。

住宅診断会社・ホームインスペクターの紹介

1.アパートの施工不良は多い

アパート経営が長い人ならいろいろな経験をしているだけに、アパートでも施工不良に悩まされることがあることはよく知っているでしょう。一般の自己居住用の住宅に比べてもアパートの施工不良問題は少なくありません。

1-1.大手でも施工不良・法令違反を連発

有名なところでは、大きなニュースになったアパート建築の大手であるレオパレス社や大手ハウスメーカーの大和ハウス工業社によるアパートの法令違反問題があります。これは、まだまだ氷山の一角だと考えられますが、誰もが知る大手ですらもこの状況です。アパート建築の根深い問題が想像できるのではないでしょうか。

1-2.オーナーの無関心も原因の1つ

アパートでこれだけ問題が続く理由の1つに、これまでのオーナーの無関心さがあります。

自己居住用の住宅を購入するときには、建築途中や完成引渡し時などに買主が第三者のホームインスペクション(住宅診断)を利用することが一般化しました。これにより、多くの施工ミス等の問題を購入時点で防いだり、瑕疵の補修を求めたりしています。

しかし、自己居住用の住宅に比べてアパートのオーナーの間ではホームインスペクション(住宅診断)を第三者の専門家に依頼するケースが少なく、早い段階で施工ミスを防ぐことができていないのです。

アパート経営を考えるとホームインスペクション(住宅診断)の費用をかけると当初の利回りが下がることも影響しているかもしれませんが、自分が住まないという点で少々のことは気にしないという意識もありそうです。たとえば、賃貸併用住宅を建築する人も賃貸用の部屋の検査はせずに自己居住用だけに絞って依頼する人も少なくないことからも、考え方がわかります。

総戸数が何十戸もあるような建物ではなく、10戸程度くらいまでの一棟の建物であれば、そう多くの下請け業者に分割して下請け工事を発注することもないので、一部の室内を検査しておけば、他の部屋も施工精度はそう大きく変わらないことは多いです。

ですから、自己居住用だけを検査しておき、賃貸用の部屋まではチェックしないというのも理に適っています。しかし、それをわかっているからなのか、賃貸用の部屋の施工精度だけが低いアパートも見つかっているので、アパートオーナーとしては気の抜けない状況です。

2.アパートのホームインスペクション(住宅診断)を依頼するときの注意点

アパートの購入や建築時にホームインスペクション(住宅診断)を依頼する人の割合は徐々に増えてきており、今後も確実に増えていくことでしょう。実際にオーナーが依頼するときに注意すべきことをまとめておくので参考にしてください。

アパートのホームインスペクション(住宅診断)を依頼するときの注意点

2-1.全室の診断はコスト高なのでサンプル調査

多くの部屋がある場合、その全ての部屋について専門家に診てもらうにはコストがかかりすぎます。多くの場合において、診断する部屋数が増えれば調査費用も高くなるからです。調査の所要時間も変わりますから当然ですね。

そこで、全室の診断依頼は諦めていくつかの部屋に絞って依頼する方法があります。つまり、サンプル調査です。室内では内装や設備関係の確認が主な調査項目となりますから、下請け業者が同じであれば多くの場合において施工精度は大きな違いはありません(一部では該当しないこともあるが)。

そこで、一部に絞ったサンプル調査とするわけです。

2-2.サンプル調査の部屋の選び方

サンプル調査をするとき、対象とする部屋の選別については少し考えた方がよいでしょう。

アパートの部屋数や配置、階数などによりますが、できる限り部屋の位置が分散しているように依頼しましょう。たとえば、各フロアに2室の2階建てならば、1階で1室、2階で1室として1階と2階は上下で並ばないように対角の位置を選んでください。

東西に長い建物で、各フロアに3室の3階建てならば、1階は西の端、2階は真ん中、3階は東の端とするとよいでしょう。選択に迷ったときには、依頼するホームインスペクション(住宅診断)会社に相談するとよいでしょう。

2-3.中古アパートなら空室のみ

中古アパートを購入するときにもホームインスペクション(住宅診断)は有効ですが、中古だけに入居者がいる状況で診断するしかありません。入居者いる部屋も診断に入れるならば、それはよいことですが、なかなか調整が難しいですから、現実的には空室のみを対象とすることが多いです。

各フロアで1室以上の空室があれば、ホームインスペクション(住宅診断)の効果という意味では理想的ですが、そうともいかない物件が多いですね。

空室がない、つまり満室のアパートを購入するときには、室内の調査を全くできないこともありますが、そのときはホームインスペクション(住宅診断)の依頼をあきらめるべきでしょうか?

実は、建物外部や共用部だけでも診断しておくことをお奨め致します。室内を確認できないことの不利はあるものの、外部の調査だけでも大事な問題がわかることがあるからです。

2-4.中古アパートの床下・小屋裏調査は難しい

アパートでも一般の住宅と同じように、床下や小屋裏の内部の調査はお奨めです。普段は見られない箇所の不具合を確認することができて有意義だからです。

しかし、アパート故の問題があります。床下は、隣室と繋がっていることも多いのですが、空室から床下へ潜って調査をしていき、隣室の床下付近まで行ったとき、物音で隣室の人が驚くことがあるのです。そういうことがないように、アパートで床下や小屋裏を調査するのであれば、事前に他の部屋の住人にも周知しておく必要があります。

また、部屋ごとに床下や小屋裏が区切られていることも少なくありません。その場合、各室の床下や小屋裏を確認するためには、各室に立ちいって点検口から調査しないといけません。ただ、そのためには入居者全員の了解を得て日程を調整しなければならないので、現実的には難しい対応となります。

床下などは大事なスペースですから、出来る範囲で診断するように手配を考えましょう。

2-5.室内だけではなく基礎・外壁・廊下・階段も大事

アパートに限った話ではありませんが、診断するときには室内だけではなく、外部の確認も重視してください。基礎や外壁などは常に風雨と日照にさらされていて劣化が進行しやすいです。また、共用廊下や外部階段もそうです。廊下や階段はその仕様によっては早期に塗装等のメンテナンスを検討しなければなりませんので、注意して観察しましょう。

ホームインスペクション(住宅診断)は、一般住宅だけではなくアパートでも広く利用されていくことでしょう。計画的に経営し入居者からのクレームを減らしていくためにも、前向きに検討してはどうでしょうか。

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