不動産業者に住宅診断(ホームインスペクション)を斡旋されたが安心できるか?

(質問)
ようやく購入したいと思える住宅に出会えたので、第三者の住宅診断(ホームインスペクション)を依頼しようと考えて住宅診断の見積りをとりました。納得して依頼しようと考えて、不動産会社にその旨を伝えたところ、不動産会社から「住宅診断なら当社で安いところを紹介しますよ」と言われました。

住宅診断は客観的な意見が必要だと思っていたので、不動産会社の斡旋する業者に頼んでよいのか心配ですが、安心して依頼してよいのでしょうか?

住宅診断(ホームインスペクション)に関するQ&Aの回答

以前は、住宅診断(ホームインスペクション)といえば、不動産会社と何ら関係をもたない第三者の住宅診断業者に依頼するのが当然でした。正確には不動産会社が斡旋や紹介するということがなかったのです。

しかし、住宅診断(ホームインスペクション)を利用する人が増えて、かつ中古住宅の売買では住宅診断(ホームインスペクション)を利用するかどうかを売主や買主に確認することが不動産会社に義務付けられたこともあり(2017年施行の予定)、今では不動産会社のなかには住宅診断業者の紹介や斡旋を行う会社が増えてきました。

不動産会社としては、買主が探してきた本当の第三者よりも不動産会社の提携先や息のかかった会社での実施の方が安心感もあるため、紹介や斡旋が増えています。

そういった不動産会社の紹介・斡旋は、基本的には買主にとっては安心できないものが非常に多いです(購入判断や補修すべき箇所の参考にするにはリスクが高い)。

不動産会社が斡旋・紹介する住宅診断を信頼してはいけない理由

不動産会社が斡旋・紹介する住宅診断(ホームインスペクション)が買主にとって信頼できない、もしくは十分なものではないことを理解しておく必要があります。ここでは、その主な理由を解説します。

理由1:斡旋される業者にとっては不動産会社がお客様

買主にとっては、利害関係の対立する不動産会社が紹介・斡旋するのですから、心配するのも無理はありません。住宅診断を行う会社や担当者によっては、不動産会社の意図(買ってほしいという意図)を汲んで、問題の事象(住宅診断で見つかった症状)を軽い表現で買主に報告することで心理操作を行うこともあります。

なぜなら、不動産会社からの斡旋や紹介がなければ、会社が成り立たないからです。そういった住宅診断業者にとっては買主ではなく、不動産会社こそが大事なお客様です。常に、斡旋してくれる不動産会社の顔色を窺っているのです。

海外ではすでに不動産会社と住宅診断業者の癒着が問題になっているところもありますが、日本でも不動産会社と一部の住宅診断業者が関係を持つようになってきていることから、同様の問題が心配されています。

高額な住宅を購入するときに必要だと考えて利用する住宅診断(ホームインスペクション)をですから、不動産会社と何の付き合いもない、提携もしていない本当の第三者に依頼する方が安心できるでしょう。

理由2:斡旋される住宅診断では買主に知らされない重要事項がある

不動産会社が斡旋する住宅診断(ホームインスペクション)は、国交省の示す既存住宅状況調査方法基準の内容に基づいています。国交省が示しているものですから、不動産会社も堂々と紹介することができます。

しかし、この基準の内容が買主にとって明らかに不利、もしくは不足する内容であるため、買主は斡旋される住宅診断は信頼してはいけないのです。

この基準を簡単に言えば、一定の項目に関する極端にひどい症状のみを報告すれば事足りるようになっているのです。限定的な一部の項目のみに絞り、さらにそれらの項目においても極端にひどい症状でなければ調査報告書に記述されることもないのですから、驚きです。

しかり、買主にその住宅の問題を把握されては購入意欲を損なうと考える不動産会社や売主にとっては、むしろ好都合ですから、この基準にそった調査のみを行う住宅診断業者の斡旋を積極的に行うのです。買主が自ら見つけてきた住宅診断業者では、知られたくないことまで発見される恐れがあると考えるわけです。

斡旋される住宅診断では、買主に知らされない重要な事項がある(しかも多い!)ことを買主は肝に銘じておきましょう。

具体的に買主へ報告されない事象とそれによって買主が負ってしまうリスクは、「売主・不動産会社のホームインスペクション(住宅診断)の注意点」に詳しく事例が挙げられています。

買主は診断現場に立ち会うべき

買主が、不動産会社の斡旋・紹介する業者を信頼してはいけない理由がわかったことでしょう。

ちなみに、依頼する前には、住宅診断(ホームインスペクション)を実施後に提出される報告書のサンプルや調査項目をきちんと確認し、なおかつ、診断の現場には立ち会うようにしてください。不動産会社が「診断結果が出ればお知らせしますよ」と言い、現場への立会いを求めない場合は診断者(ホームインスペクターや建築士)と現場で会って質疑応答することもできないうえに、現場を見ながら説明を受けることもできません。

そのような診断では、結果を正確に理解することは非常に困難であり、誤魔化しがあってもわからないでしょう。不動産会社によっては、買主ができるだけ診断の現場に立ち会わないようにしようとすることもあります。診断結果や内容が購入の意思判断に影響することを避けたいという考えによることが多いです。

診断には、現場作業に2時間程度(面積やプランにもよる)かかるものです。床下や小屋裏内部の調査も行えばもっと時間がかかりますが、依頼者が立ち会わなければ、きちんと必要な時間をかけて必要な項目の検査をしているかも確認できません。

不動産会社の紹介や斡旋による住宅診断(ホームインスペクション)でもそうですが、買主が自ら探して依頼する場合でも、現地に立ち会って作業内容を確認し、現地でしっかり説明を受けることは大変重要です。