住宅診断と既存住宅瑕疵保険は何が違うのか?

住宅診断と既存住宅瑕疵保険は何が違うのか?

中古住宅を購入するとき、建物に関する調査として利用されるサービスには、住宅診断(またはホームインスペクション)と呼ばれるものがあり、非常に多くの人が利用しています。また、既存住宅瑕疵保険に伴う検査サービスもあります。

これから中古住宅を買おうとしている人は、住宅診断と既存住宅瑕疵保険のいずれを利用するべきなのか迷うこともありますから、これらについての基礎知識と両者の違いを理解しておくとよいでしょう。

住宅診断会社・ホームインスペクターの紹介

1.住宅診断と既存住宅瑕疵保険の基礎知識

既存住宅瑕疵保険に加入するための検査も住宅診断のうちの1つということもできるのですが、個々ではこの2つの診断・検査について基本的なことを説明しておきます。

1-1.住宅診断とは

一般的に中古住宅に関する住宅診断は、売買を行う当事者である買主もしくは売主のいずれかが第三者の住宅診断業者に依頼して実施するものです。ただ、ほとんどの場合は、買主が費用負担して依頼しており、売主が依頼することはまだそう多くはありません。

買主が依頼する場合、建物の劣化状態などを把握して、補修すべき項目などを購入前に確認することで購入判断に役立てる目的であることが最も多いです。専門的でわかりづらい建物のことについては専門家の見解を聞いて購入判断の参考にするということです。

なかには、購入後に依頼する買主もいます。その場合の目的は、リフォーム時に補修すべき箇所を把握して適切な補修・メンテナンスをすることです。これも大事なことですね。

売主が住宅診断を依頼する目的は、診断結果があれば買主が安心して買ってくれるのではないかという期待、つまりよい条件で売ることです。確かに診断結果が良ければ買主としては安心できますが、売主側が出した診断結果を全面的に信用するかどうかは買主次第でもあります。

実際に、診断結果が意図的に曲げられた(表現を柔らかく抑えた)のではないかと思われる事例もありました。

1-2.既存住宅瑕疵保険とは

既存住宅瑕疵保険とは、検査するだけではなく保険が付きます。売買した後、建物に瑕疵が見つかれば、原状復旧するための補修費用等が保険金として支払われるものです。

この制度について詳細を説明すると非常に長くなってしまうため省略しますが、住宅検査事業者や不動産仲介業者などが建物を保証し、その保証した住宅に保険を付けるというもので保険付きの保証といったものです。

建物の検査では、壁内部など見えない箇所も少なくないため、保険がなければ事業者が保証するのは難しいです。そのため、このような制度になっています。

既存住宅瑕疵保険に加入するためには、所定の検査を行ってそれに合格しなければなりません。どのような建物でも保証料さえ支払えば保険付きの保証を受けられるわけではないのです。

診断する項目・範囲の相違点

2.診断する項目・範囲の相違点

既存住宅瑕疵保険に加入するためには検査を受けなければならないことを述べましたが、この検査と住宅診断には相違点があります。

既存住宅瑕疵保険の検査では、その保険法人が指定した項目のみを検査対象としています。これに対して、一般的な住宅診断では、診断時に目視確認できる範囲は全て対象としていることが多いです(会社によって相違がある)。

既存住宅瑕疵保険の検査では、保険に加入できる建物であるかどうかのみを判断すればよいわけですが、保険は建物の全ての瑕疵・症状を対象としているわけではありませんから、保険と無関係の項目は検査しておりません。保険の対象とは雨漏りや主要構造の瑕疵です(保険の特約の選択によってはその他の項目もある)。

具体的に相違する検査項目(チェックポイント)で最も代表的なものは、断熱材です。断熱材は、床下や屋根裏に目視確認できるものですが、古い建物なら設置されていないものもありますし、設置されている建物でも劣化が著しい状態であったり隙間だらけで機能していなかったりすることがあります。

住宅診断では、そういった点まで指摘してもらえて補修すべき項目としてアドバイスをもらうことができますが、既存住宅瑕疵保険の検査では何も触れてもらうこともできません。せっかく床下や屋根裏を検査しても、断熱材に問題があるかどうかを教えてくれないので、買主は知らずに購入することになります。

ちなみに、断熱材は建物の省エネ性能や暮らす上での快適性に大きな違いを出す非常に大事なものですから、確認しておくべき項目です。

他にも、基礎パッキン、手すり・樋などのぐらつき・設置状態、棚・建具の状態など様々な点で住宅診断の方が多くの項目をチェックしてくれます。

既存住宅瑕疵保険の検査では、床下や屋根裏内部を確認することは必須条件です。大事な床下や屋根裏を確認することもせずに保証や保険を付けるのは無理がありますから当然だと言えますが、逆に言えば床下と屋根裏を確認するための点検口などがない建物であれば保証・保険がつかないため、検査しても無意味なので検査しないことが多いです。

住宅診断は、目視できる範囲で診断するものですから、床下や屋根裏を点検できなくとも依頼者が希望するならできる範囲で診断を行います。大事な床下等を見られないとはいえ、見える範囲だけでも診断しておくことにもメリットがありますから、依頼する人は多いです。

3.保証・保険の有無が異なる

既存住宅瑕疵保険の検査で検査基準に合格すれば、瑕疵保険付きの保証を受けることができます(保証料は必要)。一方で一般的な住宅診断には保証がついていませんから、保証・保険の有無という点で大きな違いがあります。

買主にとっては保証・保険があれば安心感がありますから、保証・保険を付けられるなら付けておきたいところです。

4.住宅診断と既存住宅瑕疵保険の両方を上手に利用する

ここまで見てきたように、住宅診断と既存住宅瑕疵保険にはそれぞれの違いがあり、それがメリット・デメリットにもなっています。保険の安心感があるものの、大事な検査項目の漏れを補う意味では住宅診断も大事です。

そこで、住宅診断と既存住宅瑕疵保険の両方を利用する人は多くなっており、今後のトレンドになっていくでしょう。これら2つを別の会社に依頼すると日程的にも費用的にも効率がよくないため、両方に対応している住宅診断会社に依頼するとメリットがあります。

注意点としては、不動産会社は既存住宅瑕疵保険の検査のことを住宅診断やホームインスペクションと呼ぶことが多いです。この検査も住宅診断の一部だと言えますから間違ってはおりませんが、そこには断熱材等の大事な検査項目が入っていないわけですから、買主や売主としては別物だとはっきり区別しておきたいところです。

この2つの違いを正しく理解して、できれば住宅診断と既存住宅瑕疵保険の両方を同時に利用することが、買主にとって中古住宅購入で後悔しないための最良の方法でしょう。

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