知らないと損する中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)の調査項目

中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)の調査項目

中古住宅を購入するときに何らかの形でホームインスペクション(住宅診断)を依頼したり、その調査結果を目にしたりする機会は増えました。

2010年ごろまでは、中古住宅に対して利用されることが少なかったものの、その後、徐々に普及していき、遂には2018年4月からは不動産業者が売主や買主にホームインスペクション(住宅診断)について説明することが義務化されるまでになっています。

これは、大きな進歩ですね。しかし、この説明義務をきちんと果たさない業者もまだまだ多いですし、なかには買主からホームインスペクション(住宅診断)を希望しても何かと理由をつけて実施しないように誘導しようとする業者まであります。

進歩してきたものの、まだまだ業界内で改善すべき余地は大きいと言えるでしょう。

ところで、中古住宅の買主(購入検討者)も正しい知識を持っていないために、せっかくのホームインスペクション(住宅診断)を上手く活用できていない人が少なくありません。いや、相当に多いようです。

そこで、中古住宅の買主が正しい知識や不動産業界の実情を理解することで、住宅診断を上手く活用してもらうことを目的として、ここに「知らないと損する中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)の調査項目」をご紹介します。

調査項目の実態を知ることで、住宅診断を有効に活用できるようになるでしょう。

3つの調査項目基準

住宅診断会社・ホームインスペクターの紹介

1.3つの調査項目基準

中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)と言っても、全てのサービスでその内容が完全に一致しているわけではありません。むしろ、提供されるサービスによってその調査項目にはあまりにも大きな違いがあるため、利用者は違いがあることを理解しておかないととんでもない誤解をしてしまうことになります。

ちょっとした簡単な調査でお茶を濁されているということも実際にあるので要注意です。

代表的な調査の種類として以下の3つが挙げられます。

  • 既存住宅インスペクション・ガイドライン
  • 既存住宅状況調査と建物状況調査
  • 買主向けホームインスペクション(住宅診断)

これらの調査項目には相違があるので、それぞれの調査項目と相違点を以下で解説します。

2.既存住宅インスペクション・ガイドラインの調査

既存住宅インスペクション・ガイドライン

既存住宅インスペクション・ガイドラインと聞いても皆さんは耳慣れない言葉でしょう。これは、2013年6月に国土交通省が策定したもので、中古住宅の売買の際に利用されることを前提とした目視等の基礎的なインスペクションの検査方法等について指針を示しているものです。

国交省が策定していると聞けば、その信頼性が高いと感じる人は多いと思われますが、その内容は言わば最低ラインを示しているものです。詳しくは以下で解説します。

2-1.既存住宅インスペクション・ガイドラインの調査項目

このガイドラインでは、以下の3点が調査対象とされています。

構造耐力上の安全絵師に問題のある可能性が高いもの
雨漏り・水漏れが発生している、又は発生する可能性が高いもの
設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの

上の記述内容だけでは、イメージしづらいかもしれませんので、事例をあげてみます。

たとえば、土台や梁などの大事な構造部材が腐食している場合やシロアリの被害(蟻害)になっている場合は劣化事象として報告されます。また、明らかに雨漏りしている場合や雨漏りしている可能性が高いと判断されたものも報告されます。そして、給排水管から水が漏れていることを確認した場合も報告されます。

これらは、当たり前のことですね。

2-2.既存住宅状況調査と建物状況調査

ところで、既存住宅インスペクション・ガイドラインが策定された後、2017年2月には既存住宅状況調査方法基準が定められました(国交省の告示 第82号)。これには、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造といった構造種別ごとに調査項目が明記されています。

その具体的な内容の一部を紹介します。

●基礎の劣化事象

  • 幅0.5mm以上のひび割れ
  • 深さ20mm以上の欠損
  • コンクリートの著しい劣化
  • さび汁を伴うひび割れ又は欠損(白華を含む)
  • 鉄筋の露出

●土台および床組の劣化事象

  • 著しいひび割れ、劣化又は欠損

●床

  • 著しいひび割れ、劣化又は欠損
  • 著しい沈み
  • 6/1000以上の勾配の傾斜

●柱および梁

  • 著しいひび割れ、劣化又は欠損
  • 梁の著しいたわみ
  • 柱の6/1000以上の勾配の傾斜

●外壁

  • シーリング材の破断又は欠損
  • 建具の周囲の隙間又は建具の著しい開閉不良

●バルコニー

  • 防水層の著しいひび割れ、劣化若しくは欠損又は水切り金物等の不具合

●内壁・天井・小屋組

  • 雨漏りの跡

以上のような形で調査項目が定められているのです。繰り返しますが、以上の内容は全てではなく一部です。

逆に言えば、ここで対象となっている劣化事象以外の問題が建物にあったとしても、報告する必要がないものとなっています。たとえ、現場で調査を行った者が見つけた問題があっても報告されないこともあるということを理解しておく必要があります。

報告しないことについて、お墨付きがあるようなものですね。

ちなみに、宅地建物取引業法では建物状況調査について定めていますが、これは上の既存住宅状況調査と同じものです。不動産業者が紹介・斡旋しているホームインスペクション(住宅診断)のほぼ全てがこれに該当するものですから、何か問題があっても報告されない可能性がたくさんあることになります。

買主向けホームインスペクション(住宅診断)

3.買主向けホームインスペクション(住宅診断)の調査項目

前述したガイドラインや調査方法基準が定められる前から、第三者の専門家によるホームインスペクション(住宅診断)は存在しました。診断業者の数は決して多くありませんでしたが、各社が工夫して調査項目などを決めて運用してきています。

これは、ガイドラインや調査方法基準で示している調査項目よりも、広範囲に調査することが多いもので、基本的には買主が購入時に参考とすることを目的に利用されているものです。

各社によって調査範囲に違いがあるので、ここではその代表的な会社であるアネストブレーントラストの調査項目について解説します。同社の調査項目は同業他社よりも広範囲に調査しているため、既存住宅状況調査方法基準による調査と比較するうえで良い参考になります。

まず、既存住宅状況調査方法基準で定めている調査項目は全て網羅しています。これは、当然ですね。定められた最低ラインの項目は一部の例外を除いてどの会社でも基本的には守っているはずです。

そのうえで同社では、様々な同基準にない項目まで調査していますが、その一部を紹介します。

●基礎の劣化事象

  • 既存住宅状況調査方法基準で定めている幅0.5mmのひび割れや深さ20mm以上の欠損に該当しないサイズのひび割れや欠損でも、構造耐力・耐久性などに影響が考えられるものや早期に補修対応した方がよいものも依頼者へ報告する。

●土台および床組の劣化事象

  • 既存住宅状況調査方法基準で定めている著しいひび割れ、劣化又は欠損がなくとも、構造金物の取付不備や緩みなど、構造耐力・耐久性などに影響が考えられるものや早期に補修対応した方がよいものも依頼者へ報告する。

●床

  • 既存住宅状況調査方法基準で定めている6/1000以上の勾配の傾斜がなくとも、構造耐力・耐久性などに影響が考えられるものや注意を要するものも依頼者へ報告する。

●柱および梁

  • 既存住宅状況調査方法基準で定めている著しいひび割れ、劣化又は欠損、梁の著しいたわみがなくとも、構造金物の取付不備や緩みなど、構造耐力・耐久性などに影響が考えられるものや早期に補修対応した方がよいものも依頼者へ報告する。
  • 既存住宅状況調査方法基準で定めている柱の6/1000以上の勾配の傾斜がなくとも、構造耐力・耐久性などに影響が考えられるものや注意を要するものも依頼者へ報告する。

以上だけでも構造的に重要な事象が調査対象となっているかどうか、大きな違いがあるのがわかりますね。ほかにも、断熱材は既存住宅状況調査方法基準では調査対象になっていませんが、快適な生活やエネルギー効率と言う点で大変重要な項目ですから、アネストブレーントラストの調査では調査項目になっています。

4.買主なら買主向けを依頼すべき

既存住宅状況調査方法基準に基づく調査のみであるか、それ以外にも重要な点を調査するのかによって、大きな違いがあることはイメージできたのではないでしょうか。不動産業者から、ホームインスペクション(住宅診断)は実施済みだと聞いても、どちらの調査をしたのか確認しておかないと購入してから後悔することになります。

4-1.不動産業者の調査は既存住宅状況調査方法基準のもの

不動産業者から、「売主がホームインスペクションを実施済みです」と言うことがあります。また、買主が希望したときにホームインスペクション業者を紹介すると言うこともあります。これらのインスペクションは、そのほぼ全てが既存住宅状況調査方法基準に基づくものだけで、プラスαの調査はほとんど期待できません。

中古住宅を売りたい立場の不動産業者としては、詳しく調査されるよりも既存住宅状況調査方法基準に基づく最低ラインだけの調査に留めておきたいわけです。それは、売主としても同じです。

調査項目・範囲を広げることで、建物の瑕疵や著しい劣化などの問題が見つかる確率が高くなりますから、売りたい人と買いたい人とでは求めるものが異なるのです。

4-2.買主に役立つ調査がおすすめ

建物のことを詳しく知り、購入判断や補修等の判断に活用したいならば、最低ラインの調査だけではなく、買主に役立つ調査がお奨めです。ホームインスペクション業者には、アネストブレーントラストが提供しているような調査項目を求めるとよい参考になるでしょう。

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