年度末は引渡しが多い

2月から3月にかけては、購入した新築住宅の引渡しが1年のなかで最も多くなる時期です。春から新居での新生活を迎えたいという住宅購入者の気持ちや都合もありますが、実は住宅を建築・販売する側にも3月までに完成させて引渡ししたい事情があります。

多くの企業にとって、3月は決算の期末にあたります。しかも、四半期決算などではなく年度末です。その年度の経営目標を達成するかどうか、また企業で働く個人にとっても個人評価の事を考えれば、3月までの成績は重要です。

新築住宅の売主にとっては、3月までに売上計上してしまいたいわけですが、そのためには住宅を完成させて引渡しし、その代金を支払ってもらわなければなりません。多少は無理をしてでも、完成・引渡し・代金の決済をしたいと考えることになります。

こういった考えは、営業マン個人の事情だけではなく、各支店・営業センターの業績や会社そのものの業績ともかかわってきます。このコラムを読まれている方も営業職の方であれば業界は違えども感じるところはあるのではないでしょうか(営業職でなくても感じますね)。

年度末の住宅引渡しには要注意

ここで問題となるのは、売上計上したいがために引渡しや代金の決済に適さないタイミングなのに、無理矢理にそれを実行してしまうケースです。具体的に言えば、建物がまだ完成していないにも関わらず、引渡しと代金の支払いを買主へ求めてくるのです。買ったものが未完成なのに残代金を支払えというのはあまりに無茶な話です。

新築住宅は完成したものを買主の目でしっかりチェック(竣工検査や内覧会という)し、施工不良などの問題点があればそれを指摘して補修工事などで対応してもらい、さらにもう一度問題が残っていないか確認してから、引渡しを受け、同時に残代金を支払うべきです。

まだ完成もしていないのに、先に引渡しや決済を行うのは異常な行為で、契約違反にもなるでしょう。しかし、残念ながら2月から3月はこのようなことが横行しており、2月より3月にはより顕著になります。これは毎年のことです。

先に引渡しと代金の決済をしてしまった場合の買主のリスクとして代表的なものは、その後の売主や工務店の対応が悪くなったり遅くなったりすることと、引渡し後の補修工事の求めに真摯に対応してもらえないことなどが挙げられます。

そもそも毎年、2月や3月は完成を急ぐあまりに突貫工事が増え、雑な工事・作業となってしまい、かつ監理も十分に行き届かず、その結果として施工不良が一年のなかで最も多発する時期です。ただでさえ普段よりも注意すべきときに、引渡しや決済のタイミングを誤ることのないようにしてほしいです。

買主のとるべき対応

買主の立場としては、未完成物件の引渡しはしっかり拒否するということ、また完成して引渡しを受ける前の内覧会でしっかり建物の施工不良などがないか検査することを忘れないようにしましょう。

内覧会では第三者の検査を利用すると効果的ですが、この時期は特に重要で効果的であると言えます。ちなみに、内覧会で行う検査は新築住宅診断の1種とも言えます。