既存住宅状況調査方法基準で買主は中古住宅購入に失敗する

中古住宅を売買する際に利用される住宅診断(ホームインスペクション)は、不動産会社が売主や買主に斡旋する業者で利用されることが多くなりました。不動産会社と住宅診断業者の癒着問題もありますが、ここでは癒着とは別にある具体的な買主のリスクについて解説します。

既存住宅状況調査方法基準にない調査

それは、不動産会社が斡旋する住宅診断(ホームインスペクション)の調査内容が簡易的なものであり、本来なら買主へ知らせるべき劣化事象や重要な瑕疵や性能上の問題があっても堂々と知らされない(隠される)項目があります。それらの項目をここで挙げていくので、買主は住宅診断を依頼するとき、または売主や不動産会社が実施した診断結果を見るときに参考にしてください。

1.既存住宅状況調査方法基準で買主に知らされないことが正当化

中古住宅の住宅診断(ホームインスペクション)は、国交省の告示である「既存住宅状況調査方法基準」において調査内容が示されていますが、その内容に準拠するだけの診断をしても、大事なことが買主に報告されないようになっています。

簡単にいえば、調査対象とされている項目が限定的なものであることと、判断基準が緩いことが原因です。

この基準に準拠することは大事ですが、それだけでは買主にとっては不十分な調査結果しか得られないことが多発しています。

1-1.不動産会社の斡旋や売主の診断結果は買主には不足する調査

不動産会社が売主や買主に斡旋している住宅診断(ホームインスペクション)は、この基準に準拠したものですが、それ以上のことはしていないことが一般的です。そして、不動産会社もこのことをあまり意識していないことが多いです(調査内容が買主にとって不足したものだと知らずに斡旋していることが多い)。

なぜならば、不動産会社の営業マンの圧倒的多数の人は建物・建築の専門家ではないため、この基準を見ても詳しくは理解できないということも言えますし、そもそも基準の内容を確認すらしないことが多いからです。

少々、厄介なことは国交省がこのような基準を示していることにより、そこで示したことだけをしていても基準通りだと言えてしまうことです。「国交省の基準通りにやっているものです」と言われたら、多くの人はきちんとした調査だろうと感じることでしょう。

しかし、実際には後述するように大事な項目が調査されていなかったり、調査しても報告されなかったりする仕組みになっているので、買主は注意しなければなりません。

1-2.買主には基準以上の調査が必要

ちなみに、この既存住宅状況調査方法基準においても、基準で示していない項目を調査することを妨げているわけではありませんので、買主のためになるより詳細な調査をしても問題はありませんから、そういった調査をしてくれる会社に住宅診断(ホームインスペクション)を依頼するよう心掛けましょう。

2.建物外部の調査項目で買主に知らされないこと

ここからは、不動産会社が斡旋する住宅診断(ホームインスペクション)で買主に知らされないことを具体的にあげていきます。まずは、建物外部の住宅診断(ホームインスペクション)において、買主に知らされないことからです。

2-1.外壁

外壁は雨水を防ぐうえで大切な部位です。また、構造的な異常があればその症状が出てくることもある部位でもありますから、詳細に調査しておきたいところです。

外壁面の下地材まで達するようなひび割れや欠損などがあれば、既存住宅状況調査方法基準に則った不動産会社が斡旋する診断の調査報告書に記述されます(つまり買主に報告される)。下地材まで到達するような症状は非常に重いものですから、報告すべきなのは当然です。しかし、下地材まで到達していないひび割れや欠損でなければ報告されないようになっていることが問題です。

今すぐ補修や補強が必要なくとも、住まいを長持ちさせるためには補修すべき外壁のひび割れや欠損などがあっても斡旋される診断では「劣化事象なし」と報告されるのです。実際の建物には存在している補修すべきひび割れ・欠損が劣化事象なしとされることが許されているのはおかしくないでしょうか。

ちなみに、下地材まで到達しているか、到達していないかは、実は外壁表面から見ても確実に判断できるとは限りません。下地材は壁内部のものであり、直接目視できるわけではないからです。そこは、診断者の判断に委ねられる部分が大きいです。

そこで、問題になるのは、不動産業者と斡旋される住宅診断業者の癒着や忖度の問題です。厳しい判断をしていると、不動産業者から仕事を紹介してもらえなくなる立場の業者は、そういった微妙で且つ大事なことについて不動産業者にとって都合の良い調査結果としてしまうことがあるのです。

不動産業者に都合がよいとは、買主が心配せずに住宅を購入してくれる結果、つまり「大丈夫だ」という印象を与える調査結果です。不動産業者からの斡旋が経営に大きく影響するだけに、見えない力が働きやすいわけです。

買主はそういった判断・判定のプロセスや見えなない力のことまで知らされないですから、「劣化事象なし」という結果だけを見て大丈夫だと誤解するリスクがあるのです。

この後に出てくる調査項目についても、基本的に微妙なものは不動産業者よりの判断をされることがあることを知っておいてください。

基礎のひび割れ

2-2.基礎

基礎の事象で買主に知らされないことは、巾が0.5mm未満のひび割れや深さが20mm未満の欠損です。この数値を超えるものは報告書に記述されますが、未満のものは記述されず、劣化事象なしと判断されています。ひび割れや欠損といった事象は本来は数値だけで判断すべきものではありません。

実際に構造部分に影響があるものかどうか検証すること、そして今の時点では大丈夫でも、その後の劣化進行によるリスクが高いのかどうかまで考えるべきです。しかし、この基準では一概に基準未満は大丈夫だという結果になってしまうのです。

また、基礎を調査する際は、床下換気のことも確認すべきですが、この基準では調査対象外となっており、見てもらえません。例えば、基礎パッキンが大きく歪んでいて基礎に接着してしまし、外部と床下の空気交換(換気)ができない状況になっていても買主に知らされないのです。これにより、床下で結露や大量のカビが発生していた事例もありますから、リスクは大きいです。

さらに、基礎換気口が極端に低い位置にあり、雨水が床下へ流れてしまうリスクがあっても報告されません。きっと診断者はそれに気づいているでしょうが、見てみぬふりされてしまいます。床下に雨水が流れるということは、床下環境の悪化・カビのリスクがあり、これらは床下の大事な土台などの早期劣化へとつながることもあるものです。

2-3.雨樋

建物外部では意外と雨樋の調査も大事です。雨樋と外壁の接着部分からの漏水リスクもありますが、最も多い指摘は掴み金物のぐらつきです。ぐらついていると、雨樋の破損やその破損時に外壁を傷めるリスクがあります。さらに、その結果として雨漏りが起こることもあります。

しかし、雨樋はそもそも既存住宅状況調査方法基準の対象外になっており、不動産業者が斡旋する住宅診断業者では見てくれていないことが多いです。

バルコニー

2-4.バルコニー

バルコニーは雨漏りを防止する部分の調査が非常に重要です。バルコニー周りからの漏水は本当に多いからです。この点については、既存住宅状況調査方法基準でもある程度は対象となっています。

しかし、バルコニー床の勾配不足や逆勾配があっても報告書には記述されず買主には知らされません。床の勾配に問題があると雨水の排水が進まず、長時間にわたり水たまりが残ってしまうこともあります。これは劣化を早めることもあるので、補修すべき症状ですから買主としては報告してもらいたいものです。

バルコニーの排水溝や排水口のつまりもそうです。

2-5.外構・敷地状況

不動産業者が斡旋する住宅診断では、外構や敷地の状況は全く診てもらえません。何があっても報告されることはないわけです。

例えば、建物周囲の土間コンクリートに大きな亀裂があったり、庭に著しい陥没があったりすれば、地盤沈下などのリスクも考慮した方がよいことがあります。また、境界に設置されているフェンスやブロック塀に著しい劣化(大きなひび割れやぐらつきなど)があっても報告されません(見ていないです)。

ブロック塀の問題は大阪北部地震で注目されましたが、もっと以前から劣化した塀のリスクは存在しており、確認しておくべきものです。

3.建物内部の調査項目で買主に知らされないこと

次に建物内部における調査内容の問題、買主に報告されない大事なことについても見ていきましょう。

3-1.小屋裏

小屋裏

小屋裏の内部では、梁など構造部材や構造金物などを直接目視できるために非常に重要なスペースです。点検口から確認するわけですが、斡旋される住宅診断では、雨漏り跡と小屋組み(梁など)の著しいひび割れや劣化・欠損くらいしか見てもらえません。

これらの症状がなければ、劣化なしとされるわけです。

小屋裏で見るかることのある症状で、本来なら買主へ報告すべきことは、これら以外にも大事な事項がいくつもあります。例えば、構造金物の緩みや断熱材の設置不良、カビなどです。これらの問題は、建物の揺れや構造耐力の低下、断熱性能の低下(快適性やエネルギー効率にマイナス)、健康被害などのリスクがあるものですが、買主には知らされません。

買主なら、こういった症状があれば教えてもらいたいと思いませんか?しかし、気づいても報告されない症状なのです。

3-2.床下

床下

床下も小屋裏と同じで非常に大事なスペースです。床下から見える基礎は、表面にモルタルが塗られていないためコンクリート構造部を直接見られるので有意義な部位です。基礎について買主に知らされないことは建物外部のところで述べた通りです。

基礎以外にも、床組の接合部(構造耐力上大事な箇所)の緩みや土台などの染み、床の浮き、カビ、異常な湿気、断熱材の設置不良など大事なことだらけなのに、これらは知らされることがありません。たとえば、床下がごみだらけであっても、黙っておかれるのです。

床下にゴミなんてないだろうと考えるかもしれませんが、実際にはよく見つかる指摘事例です。ゴミや工事残存物がシロアリや虫食いの原因になっていることもあるので要注意です。

3-3.室内

室内でも大事な症状が見つかることは多いですが、斡旋される診断では買主に知らされないことがあります。たとえば、床や壁の傾きが6/1000未満ならば報告されず、劣化事象なしとされてしまいます。

6/1000の傾きと言えば、非常に大きなものであり、これ以上のものだけ報告すれば足りるとされているのは不思議でなりません。傾きは、地盤沈下・不同沈下、構造の異常などの可能性も考えられるため、基準未満の傾きであっても買主は知っておくべきことです。

床の傾斜測定

たとえば、4/1000もの傾きがあったとしても、何の説明もなく劣化事象なしとされているのは、買主をだましているような印象すら受けてしまいます。本当に問題ないものかどうかは、他の症状なども検証したうえで判断すべきことであり、数値だけで線を引いてしまうのはあまりにも無茶なものです。

また、壁や天井にひび割れにひび割れがあっても、その内容によっては知らされることがありません。症状によっては建物を長持ちさせるために補修もしくは状況確認を促すべきものもありますが、下地材まで到達していないと斡旋された住宅診断業者が判断すれば買主には注意も促されないことが多いです。

4.買主が知るべきことと斡旋される住宅診断は同じではない

ここまで挙げてきたことは、まだまだ一例です。他にも報告されない症状、リスクがたくさんありますが、全て挙げていくのは大変なので省略します。

ここで買主が知っておくべきことは、不動産業者が斡旋する住宅診断や売主が実施している診断は、買主が知っておくべきことを全然網羅していないという現実です。

国交省が示した既存住宅状況調査方法基準のために、買主はかえって誤解させられ、十分な対策をとらずに中古住宅を買わされるようになってしまいました。しかも、斡旋される診断によって対策をとっていると誤解までさせられています。

購入してから後悔しないためにも、買主は斡旋される住宅診断(ホームインスペクション)ではなく、自ら買主向けの住宅診断を探して依頼するとよいです。仮に、売主に事前に診断を実施していたとしても、2重で依頼することを考えた方がよいでしょう。

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