住宅購入時の買主などが自分自身で住宅診断(ホームインスペクション)をするときに、確認すべきチェックポイントを解説するシリーズです。今回は、土台・床組みのチェックポイントを紹介します。基礎のチェックポイントについては、「住宅診断のチェックポイント(建物外部の基礎)」「住宅診断のチェックポイント(床下側の基礎)」を参照してください。
1.住宅の土台・床組みの基礎知識
土台と聞くと建物を支える重要な部分だろうと想像できる人は多いことでしょう。その想像の通り、土台は基礎の上に設置されるもので、構造上も非常に重要な役割を果たす部位であり、主要構造部にあたります。この土台を含め、大引きや火打ち土台などを含めて床組みと言います。
1-1.土台・大引き・火打ち土台・床束をイラストで解説
土台など床組みの場所は図で見た方がわかりやすいでしょう。以下、木造軸組工法(在来工法)のイラストを使って説明します。
上の図(住まいの殿堂より引用)は住宅建物全体の骨組みです。屋根から基礎までが描かれていますが、このなかの赤い丸で囲まれた部分を拡大したものが以下の図です。
この図を見るといろいろな部位が描かれていますが、土台、大引き、火打ち土台を赤く囲んでいますね。
- 土台は基礎の上に載っている部分です。
- 大引きは土台から土台を架け渡している部位です。
- 火打ち土台は土台と土台を斜めに渡している部位です。
この図では省略していますが、土台や大引きの間に根太もあります(根太のない根太レス工法もある)。また、図では大引きを鋼製床束が支えていますが、木製のものやプラスチック製のものもあります。
上の写真の束は鋼製です。この束の上の木材が大引きです。
1-2.完成済み新築や中古住宅では床下でチェックするしかない
1階の床は、土台・大引き・根太の上に載っていますが、これらの部位に異常がある場合、生活していくなかで床に異常(床鳴りや傾きなど)を感じることがあります。
ただ、1階の床で確認できるのはあくまで表面的な症状にすぎませんから、床下にどのような問題があるか確認するには、床下へ潜って確認するしかありません。土台も大引きも根太も火打ち土台も床束も、すべて床下へ潜って確認することで、より多くの大切な情報を得ることができるのです。
2.床下側から見える土台・床組みの住宅診断のチェックポイント
床下へ潜った際にチェックできる住宅診断の具体的なチェックポイントを挙げて解説していきます。まずは、チェックポイントをリストアップすると以下の通りです。
- ひび割れ(クラック)
- 金物の設置状況(固定・錆・位置)
- 腐朽・腐食
- 染み・水濡れ・カビ
- 束の浮き
- 蟻道・蟻害
ここで挙げた項目について以下で詳しく解説していきます。
2-1.ひび割れ(クラック)
土台などの木部にひび割れ(クラック)があると心配する人は多いですが、その材料が芯持材ならば繊維方向のひび割れについては心配する必要がありません。材料が乾燥する過程で生じることはよくあることで、心配するほどに強度を下げるわけではありません。
ただ、材料が集成材であれば強度的に多少、心配すべきものもありますから注意が必要です。ひび割れを確認したなら、一応、専門家に相談しておいた方が無難でしょう。ちなみに、大引きのひび割れは土台と違って上の建物部分の荷重を受けるわけではないため、心配する必要はありません。
2-2.金物の設置状況(固定・錆・位置)
土台や大引き、柱、基礎などは様々な金物を使用して留められています。この金物が必要な位置に正しく固定されていないと(緊結状態が悪いと)、地震の揺れ等を受けたときに建物がダメージを受けすぎてしまう可能性があるため、重要なチェックポイントだと言えます。
手の届く位置の金物については触れて緩みが無いか確認し、手の届かない位置については目視で状況を確認してください。緩んでいる金物の補修は難しくありませんから、それほど心配する必要がありませんが、そういった箇所があれば自分で確認できない床下の奥も心配ですから、専門家や補修業者に点検してもらった方がよいでしょう。
アネストの住宅診断(ホームインスペクション)でもいろいろな指摘があがっていますが、厄介なのはアンカーボルトやホールダウン金物の設置ミス(施工不良)です。
上の写真のように基礎と土台を緊結するアンカーボルトが土台から外れていて、その役割を果たしていないものがあったり、基礎と柱を緊結するホールダウン金物が基礎の中心からずれていて柱にきちんと留められていないケースがあったりします。どちらも補修対応に困るものですが、特にホールダウン金物の施工不良は地震の際の心配がより大きいです。
ホールダウン金物の施工不良として、ホールダウン金物と筋違い金物が重なる箇所は、双方の耐力が発揮できないだけではなく、金物に損傷を与える不具合ですから注意が必要です。また、柱接合金物と筋違い金物が重なる不具合も同様ですので注意が必要です。
2-3.腐朽・腐食
土台や大引きなどの木材は床下環境の悪さや雨漏り・漏水などによって、非常にひどい劣化状態となっていることがあります。材料が腐朽・腐食していることがあるのです。ひどい状態であれば、本来の強度を保てていないことになり、地震時の問題もありますし、耐久性の面でも問題があります。
下の写真は束や土台の腐食が進んでいる状態です。
腐朽・腐食は次に紹介する染み・水濡れ・カビとも関係することが多いです。
2-4.染み・水濡れ・カビ
床下に潜っていろいろな部位を見ていると染みが見つかることがよくあります。土台や基礎に染みがあれば、それが何の染みであるか検討したいものです。例えば、洗面やトイレなどからの漏水、雨漏りの可能性を考えてみることです。
下の写真は基礎のチェックポイント時にも紹介したものですが、土台にも染みが見えます。
水濡れがあっても同様です。染みは乾いた状態で既に原因が解決済みということもありますが、今でも濡れている場合は、早急に原因を突き止めて補修等の対応をとりたいものです。
カビも早期の対応が必要な症状です。漏水などによって濡れた場所で発生する場合もあれば、床下環境が極端に悪く(湿度が異常に高いなど)カビが生じることもあります。
ちなみに、床下の湿気はシロアリを呼ぶ(シロアリが好む)環境であるため注意が必要です。
2-5.束の浮き
大引きを下から支えている部位が束です。最近は鋼製かプラスチック製が多いですが、中古住宅の住宅診断(ホームインスペクション)をしていると木製の束を見かけることが多いです。
この束は大引きに固定しているのですが(古い住宅では固定していないものある)、地面(又は基礎底盤)から浮いてしまっているものがよく発見されます(木製の束は束石の上に設置することが一般的ですが、束石から浮いていることがよくある)。大引きを支える束が浮いているということは大引きや大引きにかかる荷重を下で支えられていない状況であるため、大引きそのものが撓んでしまうことになります。
これが原因で床鳴りが生じることは多いので、床が浮いているようであれば補修しておきたいものです。
2-6.蟻道・蟻害
蟻道(シロアリが通るトンネル状の道)や蟻害は、シロアリ被害をチェックするポイントのことです。蟻道は基礎や束に見られることが多いもので、蟻害は束・土台・大引きといった木材に見られることが多いです。よく見ないと発見できないものもあるので、この確認は簡単ではありません。
上の写真は基礎から土台にかけて見られる蟻道です。
蟻道や蟻害はわかるづらいものもあるため、本来なら白蟻の専門業者にチェックしてもらうのがよいのですが、住宅購入時に白蟻業者に入ってもらうのも難しいので、可能な範囲で確認しましょう。