住宅診断（ホームインスペクション）の申し込みを検討している人からよくある質問の1つが図面に関することです。図面の有無は多くの人にとって疑問・不安をもつ種となっているのです。
（質問）間取り図しかない中古住宅でも住宅診断できるか？
図面といってもいろいろなものがありますが、住宅診断を申し込みする時点で間取り図しか持っていないという人は少なくありません。特に中古住宅を購入する前に申し込みしようとしている人であれば、多くの人がこれに該当することでしょう。
「中古住宅の住宅診断を頼みたいのですが、間取り図しかもらっていません。それでも診断できるのでしょうか？」と本当によく聞かれます。
この質問へ以降で回答し、関連することを解説していきます。
（回答）間取り図だけでも住宅診断を実施可能
先に結論を言ってしまえば、間取図だけしか持っていなくても住宅診断を実施することは可能です。ですから、図面不足で診断が適切にできないのではないかという不安は持つ必要がありません。
○住宅診断は現地で現況を見るもの
住宅診断とは、現地で建物の現況を目視や計測、触診、打診といった方法によって調査するものです。決して、図面の内容を精査するような検査ではありません。現地で建物の外部や内部を確認できるのであれば、図面がなくても住宅診断を実施することはできるのです。
○既存住宅インスペクション・ガイドラインと図面
住宅診断に関しては、国土交通省が既存住宅インスペクション・ガイドラインというものを公表しています。これはあくまでガイドラインであり義務というわけではありませんが、住宅診断がどういったものであるかを確認するための参考となるものです。
この既存住宅インスペクション・ガイドラインにおいても、様々な図面を閲覧・確認して精査することを求めてはおりません。図面と現況が一致しているかどうかの確認も含まないとしています。
○間取り図は建物の全体像を把握するために必要
それでも、住宅診断（ホームインスペクション）を２００３年から行っているアネストでは、最低限の書類として間取り図の提示を求めていますが、それはなぜでしょうか。
建物を診断するうえで、診断する担当者（建築士・インスペクター）にとって建物全体の形状をある程度、把握しておく必要があるからです。
それによって、診断を進める順序を予め考えておいたり、注意すべき点を想定していたりといった事前準備ができますし、何らかの指摘事項（劣化事象など）を確認したときに、その発見による注意点を考えやすいという利点もあります。
○立面図もあった方がよい
本当ならば、立面図があればそれも準備してほしいものです。立面図とは建物を横方向（水平方向）から見た図面ですが、これと間取り図（平面図）があれば、専門家は建物の形状を立体的に把握することができるからです。診断する担当者（建築士・インスペクター）にとって便利なものということが言えますね。
○間取り図以外の図面の必要性
間取り図や立面図以外にも建物には様々な図面があります。断面図、矩計図、伏図、金物配置図、設備図などの図面です。これらは、実は住宅診断に必須のアイテムではありません。全く閲覧しないことも非常に多いものです。
住宅診断で何らかの不具合や劣化事象が確認されたとき、こういった図面があることによって、その原因を予測することができたり、被害範囲を予測することができたりするので、存在するのであれば準備しておいた方がよいのですが、これらの図面を必要とするような症状（不具合・劣化事象など）がなければ、せっかく準備したとしても全く見ないことが多いのです。
これは、見てもらえなくて残念というものではなく、見る必要がないといことですね。
ちなみに、住宅診断には必要のない図面であっても、売主などが保有しているのであれば、購入時にはきちんと図面も引渡しを受けて引き継いでいくようにしましょう。購入時に、どのような図面があるのか不動産会社を介して売主に聞いておくとよいでしょう。
○間取り図だけでも十分に住宅診断を実施可能
ここまでに説明したように、住宅診断を実施するためには間取り図さえあれば問題はありません。間取図ぐらいしかないから診断する意味がないのではないかと悩む必要はありません。
そもそも新築時や大規模リフォーム時の図面をきちんと保存していない売主は非常に多く、図面が無ければ診断できないというのでは、できない住宅が多すぎますね。なかには、図面が無い中古住宅は買うべきではないとまで考える人もいますが、購入できる物件の選択肢を狭めすぎてしまうため、この判断は慎重にした方がよいでしょう。
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