12月完成・引渡しの新築住宅に要注意

12月完成・引渡しの新築住宅に要注意

毎年、12月になると「もうこの時期か。今年も早いな」と思うものですね。住宅診断(ホームインスペクション)を仕事としている人にとっては、「また、新築住宅の施工不具合の多い時期か」や「引渡し前後のトラブルの多い時期か」という考えが思い浮かぶときでもあります。

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1.12月に完成・引渡しする新築住宅には施工ミスが多い

12月に工事が完了して引渡しを行う新築住宅は多いですが、この時期に完成・引渡しを迎える物件では、施工上の不具合が起こることも多いという現実があります。これは、昔から続く現実ですから、不動産・建築業界で改善していくべき課題なのですが、ある事情によりむしろ悪化していることもあります。

1-1.工事遅延と突貫工事の問題

なぜ施工不具合が生じるのでしょうか。いつまでも無くならないのでしょうか。その1つの要因となっているのは、工事の遅延と遅延を挽回するために行われる突貫工事です。他にも、工事監理をきちんとしていない問題などもありますが、工事遅延と突貫工事も主な原因となっているものです。

工事遅延とは、もともと予定していた工期よりも遅れてしまうということです。

たとえば、11月末日に完成して12月5日に完成検査、12月15日までに手直し工事をして、12月20日に引渡すといったスケジュールを組んでいる場合、工事が遅延して完成が12月10日になってしまったら、後の予定はどうなるのでしょうか。

引渡し日を延期する必要が出てくることもありますね。それでは困るということで、工事を急ごうという考えになり、突貫工事をしてしまうのです。

突貫工事をすれば、1つ1つの作業や管理が粗くなり、ミスを誘発することはよくあることです。その補修をする時間を満足にとれないこともあります。結果的に、この時期に完成・引渡しする住宅の施工不具合が多くて品質が悪いというケースが増えるわけです。

1-2. 12月に引渡ししてしまいたい不動産会社・建築会社の都合

なぜ12月に完成・引渡しをする住宅には施工不具合が多いのでしょうか。それは、不動産会社や建築会社の都合が大きく関係していることが多いのです。

不動産会社などの会社は、12月に決算月を設定している会社も少なくありません。中間決算や4半期決算の月ということもあります。つまり、12月末までに売上計上しておきたいという考えが働きやすい時期なのです。12月以外にも3月や6月、9月も同様の理由で売上計上したいと考える会社や担当者は多いです。

工事が遅延して引渡し日が1月にずれ込んでしまっては困るという理由で、強引に完成させて引渡してしまおうという住宅が数多く出てくるのです。つまり、12月は住宅購入者が警戒すべき時期なのです。

1-3.もともと工期にゆとりのない建売住宅はリスクがより高い

工事が遅延した住宅において、前述したように突貫工事をして施工不具合が生じることが多いと述べました。逆に言えば、前提の工程(工期)にゆとりをもった計画を立てている新築現場であれば、このようなリスクが生じにくいということが言えます。

建売住宅の建築は、残念ながらコスト抑制のために工期にゆとりを持たせないことが多く、工事遅延と突貫工事が起こりやすいという問題があります。特に、低価格を売りにしている建売ではその傾向が顕著であり、ひどい住宅では未完成のまま無理矢理に引渡してしまおうとするケースもあるほどです。

2.12月に入居したい住宅購入者も多い

工事遅延によって施工不具合が起こりやすくなるのは、基本的には売主や建築会社の都合によるものですが、実は購入者(買主)側の意向がマイナスに作用することもあるので、注意が必要です。

12月というのは当然ながら年末ですが、この時期に住宅が完成する物件を購入した人は、12月に入居して新年を新居で迎えたいと考えることも多いです。確かに、せっかくですから、新居で新年を迎えたいと考える気持ちもわからなくはないですね。

ただ、工期にゆとりがあるならばいいのですが、ゆとりがないにも関わらず、そのようなスケジュールを組んでいると工事が遅れたときに、工事を急ぐように建築会社へ要望することになってしまいます。これは、突貫工事を求めるようなものであり、リスクが高いです。

3.12月完成・引渡しの新築住宅を購入するときの注意点

ここまでに述べてきたことを考慮すれば、どういったことに注意しておくべきかある程度イメージできることもあるでしょう。12月に完成・引渡しをする新築住宅を購入するときの注意点をまとめておきます。

3-1.入居までのスケジュールにゆとりをもつ

工期が遅れても工事を急がせる必要のないように、完成日・引渡し日から入居するまでのスケジュールに十分な余裕をもつようにしてください。タイミングによっては、今の住居の家賃が1月分増えることになるかもしれませんが、欠陥工事による被害の方が甚大なものになることがあります。

3-2.完成後・引渡し前のチェックは入念に

予定通りの時期に完成したとしても、買主が知らないだけで、建築会社が工事を急がせていることはよくあることです(これは非常に多いです)。その場合、施工不具合が起こっている可能性が高くなりますから、完成後、引渡し前に行う買主による検査(内覧会や確認会などという)でしっかりチェックしておくように注意しましょう。

売主によっては、引渡し前のこの大事な機会を買主に案内しないことまであるため、自分から売主へ確認した方がよいです。このスケジュールは売買契約時などにもらえる全体のスケジュール表などで確認するとよいでしょう。

3-3.未完成で引渡しをうけない(代金を支払わない)

一部の住宅では、工事が全て完了していないにも関わらず、無理矢理に買主へ引き渡そうとすることがあり、これによるトラブルの相談を何度も何度も聞いています。一般的には、引渡しと同時に代金の全額を支払うことになりますが、支払った後の対応(工事など)が遅かったり、工事品質が悪かったりといったトラブルは多いですから、注意してほしいです。

必ず、工事が完了してから買主による完成検査を行い、その検査で指摘した箇所の手直し工事後の確認もしてから、引渡しと残代金の支払いを行う流れとしましょう。

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